K-1初期のアーツは、鬼のような強さを発揮する一方で、穴もあるファイターだった。

戦績を振り返ると、96年のベルナルド戦3連敗が目立つ。1試合は金的による反則負けだが、他の2敗はパンチによるKO負け。無敵のアーツにもパンチの防御に難有りとの烙印を押された。

97年から99年にかけては98年のGPを制覇する等復調したが、2000年のアビディ戦で2連敗。背筋損傷の影響もあって、これまで見せたことがなかった弱々しい姿を晒した。

この時期を境にファイトスタイルが変わったアーツ。豪快なハイキックで相手の首を刈り獲るようなこれまでの勢いが失せた代わりに、円熟味を増したとでも言うか、手堅いファイターに変貌した。

それから今日に至るまでの円熟期のアーツは、完敗と呼べるような負けが極めて少ないのだ。

フィリヨ、ボタ戦は持病とも呼べる脛の裂傷が原因でのTKO負け。

ベガスでレコにスコーンとKOされた試合とシュルトにKOされた試合は、それぞれトーナメントの決勝戦(一日3試合目)だから致し方ない。

ミルコ、イグナショフ、セフォー、武蔵、ホーストら相手に判定負けした試合のスコアは1-2や0-2で、接戦と呼べる範疇だった。

逆にフルマークの判定負けを喫したのはシュルト戦(06年)とアリスター戦の2試合。トーナメント決勝以外でのKO負けはハリ戦と京太郎戦のみだ。

2001年以降に行ったK-1の45試合中、完敗はこの4試合のみなのだ。

これは驚異的な数字と言えるだろう。45試合行って、完敗がわずか4試合なのだ。

圧倒的な体格差あるいはパワーの差があったシュルトとアリスター。明らかにスピードと勢いに差があったハリと京太郎。彼ら四人には不覚を取ったアーツだが、今回の相手であるマイティ・モーはどうだろうか?

大振りのフックが当たれば危ないかもしれないが、アーツの手堅さを鑑みればその可能性は皆無に等しいだろう。

アーツに死角なし。どう考えてもローキック主体の攻めでモーに勝利するシーンしか思い浮かばない。

戦前から勝敗が見えている試合がGP本戦として行われるのは残念だが、無傷のアーツvsシュルトを準決勝で見れることを楽しみに観戦したいと思う。


K-1GP一回戦第一試合
○ピーター・アーツ(KO)マイティ・モー×