私は外国のキックボクサーが嫌いだ。大した技術も無いくせに、面白みにも欠けているファイターばかりだからだ。

しかし、今日紹介するカタリン・モロサヌには好感が持てる。倒せるパンチを持っており、誰が呼んだか“欧州のブンブン丸”の異名どおりにそれを振るいまくる。その威力は、あの澤屋敷純一を1Rで葬り去り、グッドリッジ陣営にタオルを投入させたほどである。

そして何が面白いって、彼が尊敬するファイターはボブ・サップ。チキンハートとして蔑まれがちなサップをモロサヌは尊敬すると言ってはばからない。お前はそのはばからない場面を見たのか!?と突っ込まれそうだが、公式サイトの選手データに「ボブ・サップに憧れる男」と明記されているのだから間違いないだろう。

そんな男気溢れるモロサヌが、21日に開催されたK-1ブカレスト大会に出場し、ワールドGP常連のエロル・ジマーマンとスーパーファイトを戦った。

果たして結果は、第1ラウンド開始後わずか10秒程度でジマーマンのTKO勝利と相成った。">

なんだよ、ジマーマンが相手とは言え、わずか10秒でTKOってどんだけだよ!と思われる方も多いと思うが、実はこの試合、何ともスッキリとしない幕切れだったのだ。

試合の流れに沿って説明していきたい。

3d9b657c.jpg開始のゴング直後、まずはジマーマンが右ローキックをヒット。余りの威力に体が流れそうになるも、堪えるモロサヌ。

そして、ローがヒットするこの距離は危険だと判断したモロサヌは、一気に前に出てパンチを振るう(距離を詰めることは試合前から考えていただろうが)。

ジマーマンを後退させることには成功したが、さらに前に出るモロサヌを待っていたのは、カウンターの飛び膝蹴り。ジャンピングし〜の、頭を抱え〜の、みのさん白昼のトークよろしく思いっ切り膝が炸裂〜の、モロサヌよろよろ〜の、そこに空かさずジマーマンの右ストレートがヒット〜の。

パンチよりも飛び膝のダメージが大きかったと思うが、一瞬モロサヌは立ったままの状態で意識を失い、ロープにもたれる。


私個人の見解では、この時点ではレフェリーは試合を止めてはおらず、ダウンカウントを数え始めようとしているのではないかと思う(動画後半のリプレイ映像にそれを思わせるレフェリーの動作が見られる)。

image02そして、ロープにもたれたモロサヌはすぐに意識を取り戻すが、今度はなぜか左手のグローブがロープ(の固定紐?)に引っ掛かり、腕が引っ張られ〜の状態に。

その様子を見て取ったレフェリーがモロサヌを抱きかかえるような状態になり、ゴングはならなかったが、その時点で試合終了の判断が成されたように思う。そして、自陣のコーナーポストに座り込み、この珍事の成り行きを見守っていたジマーマンが勝ち名乗り。


この試合はゴング前から腑に落ちない点がいくつかあったため、私としては何とも煮えきられない試合になってしまった。

まず、ゴング直前になってモロサヌのグローブにバンテージが巻き直されたこと。普通は控え室で敵陣営立会いのもとにバンテージが巻かれ封印をされるはずだが、なぜこのような事態になったのだろうか?そして、この不手際が試合中のアクシデントに繋がったのでないかと懸念され、非常に残念である。

また、KOした後にゴングが鳴らされないため(他の試合も同様)、観客どころかジマーマン陣営も戸惑ってしまった。また、試合をストップしたことをレフェリーは即座に、明確な動作で意思表示しなければならない。

image03そして何よりこのマッチメークが問題。試合前に対峙する両者の体格差を見比べて欲しい。2回りくらいジマーマンが大きいように見える。公式サイトによるとモロサヌの体格は身長182cmで体重100kg。ヘビー級としては非常に小柄だ。

ツイッターで呟かせてもらったことだが、私の実弟はアイヌ最後の生き残り又は和製ビターゼ・タリエルと呼んでも差し支えなさそうな風貌で、身長は確か184cmで体重は100kg超。私より一回り大きい。そんな弟とモロサヌの体格を数値で比べると、モロサヌの方が小さい。それなのにスーパーヘビー級のジマーマンと試合を組むのは酷と言うものだろう。私に言わせればこのマッチメイクは、ミノワマンのモンスタークエストに負けず劣らずなフリークショーだ。

私の見積もりではモロサヌの適性体重は80kg前後。彼以外にも欧州には無理にヘビー級で戦っているファイターが少なくない。サメドフにスポーン、カラエフ等・・・。

彼らがスピードと技に頼って頑張ったところで、シュルトが君臨するスーパーヘビー級の牙城を崩すことはまず不可能であることが分かり切っているから面白くない。彼らの試合に乗れないのだ。

運営側の不手際と無理なマッチメークでせっかくの逸材モロサヌを活かせなかったことを反省し、ヘビー級未満の選手が輝けるステージを創出して欲しいものである。

スーパーヘビー級の選手をまぐれでKOすることが彼らの輝きだと見なすと言うなら話は別だが。



(追伸)
この試合のレフェリングに対する私の見解については異論が出るかもしれない。一瞬意識を失ったモロサヌを見てレフェリーは即座に試合を止めたのだ、何も問題ではないとおっしゃる方もいるだろう。

しかし、K-1の特性として、あの程度で試合を止めることはあり得ないし、グローブチェックもまともに出来ない主催者が、厳正な判断を下すようなまともなレフェリーを雇えるとも思えない。

第一、レフェリーはモロサヌの負けを明確に意思表示せず、ジマーマンが自陣コーナーで事の成り行きを見守るという異常事態が発生したのだ。

見識の高い皆様方のご意見をお聞かせいただきたい。嫌味で言ってるんじゃないですよw