十数年前の格闘技と言えば、レスリングや柔道のような社会体育としての格闘技を除けば打撃系のものが大半を占めていました。

専門誌もキックボクシングと空手、シュートボクシング等に大半のページを割いていました。

ところが、UFCやブラジリアン柔術、PRIDE等の台頭によって総合格闘技が脚光を浴びるとともに、打撃系の選手がのこのこと総合のリングに上がり、不慣れな寝技で生贄にされてきました。

そしていつの間にか、打撃系格闘技は総合では通用しないという定説がまかり通るようになってしまいました。

しかし、打撃系も黙ってはいませんでした。持ち前の打撃技を総合格闘技に順応させ、レスリングと寝技に対する“免疫”を身に付けることで、打撃系格闘家が総合のリングで勝利することが多くなってきました。

打撃系格闘技のイメージ回復に貢献した選手の筆頭格は、やはりミルコ・クロコップで異論はないでしょう。他にはUFCで活躍中のリョートは伝統派空手出身だし、細かいところで風田陣なんていうキック出身のシューターがいました。

そして、最近ではやはりこの男抜きでは語れません。極真空手出身の総合格闘家、菊野克紀です。

先日のDEEPライト級王者決定トーナメント準決勝では、柔道銀メダリストのチョン・ブギョンを圧倒し、TKO勝利を収めました。

菊野には強力な武器があります。前蹴りとミドルキックの中間のような蹴りで、指先の裏側を相手のボディに突き刺す蹴り技で、その名も三日月蹴りです。

相手にしてみれば相当怖い技だと思います。この技があるだけで菊野は試合開始時点から精神的優位に立てるんじゃないか。私はブギョン戦でしか見たことがありませんが、そう思えるほどに強烈な威力の蹴りです。

地味な風貌ながらも着実に実績を積み上げている菊野選手に要注目です。期待しても絶対に損はしないでしょう。

勝利した後に空手の黒帯を腰に巻くのも好印象。コール時と勝利後に行う息吹のポーズも最高にカッコイイですよ!