『DREAM.2』における船木の戦いぶりについて『別冊・プロレス昭和異人伝』では次のように記されています。

格闘技の試合での基本は、能動性です。
相手が何をしてこようが関係なく、つまり相手に合わさず、受け身的にならず、主体的に自分の行なうべき行動をとる事。

全ての選手に能動性が大きな要素を占めるというわけではありませんが、テクニシャンでもない船木が行なうべきは闘いの基本の前提は能動性しかありません。


確かにそのとおりであり、趣味の園芸程度に格闘技をやっていた私とはまったく別次元でアマレス等に携わっているshingol様に対して意見などできるわけがありませんが、今回の打撃の攻防について一言申したいことがあります。

船木は今回の試合に向けて、ドラゴンジムの前田憲作氏に師事を仰いだそうですが、なるほどいかにも“平成の名伯楽”の異名をとる前田氏が伝授した型を忠実に実行したような戦いぶりでした。

しかし、“こうすればこの打撃が決まる”という型(コンビネーション)にこだわり過ぎていたのではないかとも思います。

前田氏が伝授した型どおりに試合を行い、それによって大金星を挙げた好例がバンナに勝った澤屋敷でしょうが、型どおりに試合を進めたところで試合に勝てる保証はありません。

前回のエントリーにも同じようなことを書きましたが、いくら型をマスターしたところで、相手は型どおりに動いてはくれないのですから、相手の動きに応じて型を崩す必要もあるのです。

素人なりの意見を言わせてもらえれば、船木は上半身の動きが堅過ぎました。型どおり、イメージどおりの動きを貫くことも楽ではないでしょうが、スウェイバックや頭を左右に振ることで、フェイントをかけたり田村の打撃を避けるべきだったのではないか。タダでさえ試合勘の鈍っている船木が紙一重のところで相手の打撃を避けるなんて不可能なのですから、少しオーバーに上半身を仰け反らすくらいでも良かったと思います。

レベルは低いですが、私の場合はブロックして相手の打撃を防ぐのではなく、パーリングやスウェイバック、インアウトの動きを(自分なりに)素早くすることで相手の打撃を避けるタイプだったので、今回の船木の動きを見ていて、何ともぎこちなく感じた次第です。

船木は確かにパンチは1〜2発良いのを決めましたが、私には『ストリートファイター』のようなTVゲームの何連コンボみたいな型どおりの動きにしか見えませんでした。そして、それは船木が打撃を当てたのではなく、あくまで前田氏の知識と経験と洞察力が、船木の肉体を借りて田村の頬を捕らえたようにしか思えないのです。

しかし、船木自身にもパンクラス時代に培った経験と技があります。それが現在の技術体系や今回一定の効果をもたらした前田氏直伝の打撃技術と上手く融合すれば、船木は見違えるような活躍をしてくれるはずです。

幸い、船木はすぐにでも次の試合をやりたい意向の様子。皆さんも感じたと思いますが、これだけの雰囲気を醸し出せる格闘家はなかなかいませんから、『DREAM』実行委員会にはこれからも船木を意義のあるマッチメイクで重用することを望みます。