最初から結果が見えていて、それに向かって進行するだけの戦いほど退屈なものはない。

先月30日に開催されたKrushの後半戦は、まさにそんな予定調和の世界が繰り広げられた。

この大会は、Krush初代王者決定トーナメントの準決勝と決勝が3階級に渡って行われ、55kg級はK-1甲子園出身でSB王者の日下部を下した瀧谷渉太、60kg級は準決勝で野杁を逆転完全KOで下した“狂拳”竹内を左ハイキックで葬った卜部兄、63kg級はチームドラゴン同士の決勝戦を制した梶原龍児が初代王者に輝いた。

問題は63kg級。最初から見えてたもん、チードラ同士の決勝戦が。

梶原と卜部弟の“殴り愛”が予定通りに行われ、梶原が貫禄の勝利。会場は熱狂。最期はファイナリスト同士が互いに健闘を称え合って、ノーサイドの大団円のうちに幕が下りた。

こんなもん面白くも何ともないだろう。

負けた卜部はしきりと悔しがっていたが、私の目には全く悔しがっているようには映らなかったし、実際打ち上げでは「龍児さん、次やったら負けないス」「いつでもかかってきやがれ、てやんでい」的な明るいやり取りが交わされたことと思う。

いや、真剣勝負の格闘技で予告どおりに同門対決を実現させることは容易ではないと思うし、梶原も卜部も意図して手を抜いた訳でもないから悪くはない。

しかし、同門対決は所詮同門対決でしかないのだ。

卜部はいつも梶原にボクシングの出稽古に連れて行ってもらってる身分なんだよ。そんな2人が試合して何が面白いの?

まぁ、準決勝でどちらかが負けていれば同門対決は実現しなかった訳だから、戦犯は梶原と卜部ではなく、彼らに負けた才賀紀左衛門と白濱卓哉だろう。

その意味では、私は才賀に大いに期待していたが、梶原との体格差は如何ともし難く、K-1-63準決勝での大和戦のようにカクンとダウンを奪われると、全く挽回できずに大人しく判定負けを喫した。才賀は壁にぶち当たったような気がする。王座を狙うならば、-60に転向するのがベストかもしれない。筋骨隆々ではあるが、基本的に体が小さ過ぎる。

もう一方の準決勝は目も当てられない内容だった。白濱を完全に見切った卜部は、ガードを固める相手の頭をポンポン叩いて小ばかに下した挙句、コーナポストに寄りかかって来い来いポーズまでする始末。白濱は苦笑いしながら棒立ちの卜部にラッシュを仕掛けるが、何らダメージを与えられず。練習内容の質の差がもろに試合に出てしまった。白濱は個人で行う基礎動作の反復や体力トレーニングは相当にやり込んではいるのだろうが、あとは「一歩上の技術」をどこでどう学ぶかが問題だろう。

image閉会式では各階級の初代王者を中心にリング上で記念撮影していたが、郷野相手に糞試合を演じた山本優弥がその一番後ろから首を出して写真に収まるという茶目っ気を見せていた。まるでデジャブのような光景に私は落胆した。

閉会式終了後に呆然とリングサイドを眺めていたら、卜部や才賀に女性ファンらが群がり、つまらないプレゼントを贈ったり、記念撮影をする様子が伺えた。選手もファンもとても居心地が良さそうな空間が出来上がっていた。

この空間には私は馴染めない(水戸納豆でも持参して選手にプレゼントしろとでも言うのか?)。旧来の格闘技ファンにとってKrushはちょっと刺激が足りないように思う。

出場選手のうちチームドラゴンの選手が半分近くを占めているのも緊張感不足の遠因。身内だらけの雰囲気になってしまうから。

このままでは腐女子にキャーキャー騒がれるだけで終わってしまうよ。後楽園ホール以上を目指すキックボクサーらの集合体=Krushの実力はそんなものではないと思うから苦言を呈させてもらった。

奇しくも今月30日に開幕するKrush70kg級トーナメントの記者会見が昨日行われたが、こちらも馴れ合いに終始したようで非常に残念(Krushオフィシャルブログ参照)。本当に情けない。

間違っても私はチケットを買わない。




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