我々ファンは何を観ることに楽しみを見出しているのか?

嫌いな団体が潰れて喜ぶのか?

どの勢力とどの勢力がくっついて新団体が誕生することを予想して楽しむのか?

日米のイベントのコンセプトの違いを比較するのが楽しみなのか?

そうではない。

我々ファンは、男同士が殴り合う格闘技の試合を楽しんでいるのだ。極端なことを言えば、選手が繰り出す技のレベルを吟味することではなく、戦いを通じてファイターの人間性を見ることが何より楽しいのだ。

先に行った判定決着好試合のアンケートでは、魔裟斗と佐藤の試合がダントツで票を集めたが、あの試合の面白さを技術的な側面から語れる人間は少ないだろう。しかし、あの試合は多くのファンに評価されている。

それはなぜか?

それは、魔裟斗と佐藤嘉洋という2人のファイターの人間性同士のぶつかり合いにファンが魅了されていたからに他ならない。

敷かれ続けたスタア路線の集大成となる決勝トーナメントで絶対に負けるわけにはいかない魔裟斗の恍惚と不安。

実力的には全く劣っていないにも関わらず、裏街道を歩き続けてきた佐藤のジェラシー。

そんな2人が演じたドラマにK-1ならではの"隠し味"が加味され、この試合は未来永劫語り継がれる伝説にまで昇華した。

格闘技に物語が不要だなんて、どこの馬鹿が言ってるんだ?

物語が不要だというなら、その対案は何かあるのか?

あるわけがない。格闘技は、野球やサッカーのようにゲーム性の高い競技ではないのだから、普通にやっていたのでは大衆の関心を集めるなんて絶対に無理なのだ。いつまでもK-1勃興の奇跡を追い続けるな!

さて、物語のかけらも落ちていないように思われるK-1ワールドGP東ヨーロッパ大会が、5月21日にルーマニアで開催されることが発表された。

この大会には、日本でも馴染みのファイター何人かが出場しスーパーファイトを行うが、それはひとまず置いておき、メインイベントであるトーナメントの出場者にスポットを当てたエントリーを次回から書いてみたい。

シリーズ化すると宣言して、実際に継続したことはない。そこは許して欲しい。