平成21年7月24日から26日の三日間に渡って開催された『第26回全国少年少女レスリング選手権大会』を観戦して思ったこと。

激戦の末に惜しくも1ポイント差で敗退した、強豪クラブ所属の女の子は、悔しさに全身を震わせながら、順位確定票を受け取るために審判席へ向かいました。

準決勝で敗退して順位確定票を受け取るなんてことは彼女にとっては全くの想定外だったのでしょうね。優勝することしか考えていなかったと思いますから。

女性の審判員がA4サイズの順位確定票を差し出すと、その女の子は審判員の手を払うようにしてそれを奪い取ったのです。まるでチンピラのような振る舞いでしたよ。

なにやってんだコイツは!?・・・と、私は唖然として見ているだけでしたが、そこに駆けつけたクラブの監督さんに思い切り頭を引っぱたかれたのを見て、少しだけ溜飲が下がりました。

本来だったら親がそこに駆け寄って、娘を叱り、審判員に謝罪させるべきだったでしょうね。

また、審判員も選手を叱るべきでしょう。苦笑いしてる場合じゃないって。土下座して謝るまで確定票は渡さないぞ!くらいの勢いで叱るべきですよ。

そして、私が後付で思ったのは、何がこの女の子に「勝つことだけに価値がある」みたいな観念を植え付けてしまったのか?ってことなんですが・・・

レスリングってのは皆さんもご存知のように階級制であり、階級制って言うと減量が付き物ですが、青少年の健全育成を目的とした少年少女レスリングにおいては、減量して階級を調整することを禁止しています。

しかし、その女の子が所属している強豪クラブの子供らは、同じ階級の子供に比べて体が一回り、下手すると二回りくらい大きいケースが見受けられるのです。

ここまでで、私が言いたいことは皆さんお分かりかと思います。

勝てば官軍。減量と言うバレにくい反則ならば、進んでやるべき。そんな方針の下で育てられたキッズレスラーは、レスリングは強くなっても、人間的には全く成長できない子供になってしまうのです。

あんな行為をする子供を排出しているようでは、強豪クラブの名折れです。いくら全国大会を制覇しても、正々堂々と現体重の階級にエントリーしてきた、自分よりはるかに小柄な相手をフォールして積み重ねた白星に、どれほどの価値があるというのでしょうか?

ただね、人間ですから結果は出したい。出させてやりたい。それが正直なところです。私自身、自分よりリーチの長い相手と戦う難しさと、自分より小さい相手と戦うことの容易さを、実体験を通して理解していますから、自分の娘が結果を出しやすいようにぎりぎりのラインであれば軽い階級にエントリーさせてやりたいと考えています(逆に重い階級はエントリー数が少なくて入賞しやすいって話もありますがw)。

減量の是非については、どこまでが許されるのか?何が減量であって何が減量ではないのか?チェック機能は有無は?等、議論しても答えは出ないでしょう。

しかし、レスリングを通じて学んだことが、子供の人間形成にどれだけ役立つか?

それが最も重要であることには、誰も異論がないはずです。

自分の子供にレスリングを学ばせるならば、元世界王者とかオリンピックのメダリストいう実績を引っさげている人物よりも、大阪で青空道場を主宰しているshingolさんのような、他人の心の痛みが解る人物のもとに通わせたいと思います。

実際、私の娘はなかなか素晴らしい人間性を有する監督さんのもとでレスリングを学ばせてもらってます。ありがたいことですが、娘が高学年になった際に私が「多少の減量をさせたい」と申し出たら、監督と私が衝突するのは間違いなさそうです(苦笑)