前回のコラム「所詮はタレント 金子賢」に対してゲンコツさんから、怪我をする危険度の高いプロの試合に出た金子と同危険度が低いアマチュアの試合に出た一茂とを比べるのは強引ではないか?という反対意見を頂戴しました。ゲンコツさんにはコメントをくださったことにまずもって御礼申し上げます。

そう言われてみるとたしかに強引な論調だった気もしますが、私の観点を書かせていただきます。

まず、プロの試合で怪我をするケースは、実力が拮抗した者同士の対戦で起こりがちなものです。金子vsベネット、金子vs所のように実力差が大きい者同士の対戦では、怪我をする前に容易に関節技でタップアウトする形になります。相手がタレントで初心者ともなれば手加減もするでしょう。実際にベネットも所も打撃をかなり控えました。金子自身もそのような展開を充分に読んで、少しでも威勢の良いところを見せられたら・・と判断してのデビューだったのでしょう。怪我をするほどの死闘を想定していたとしたら、本当の馬鹿かキ印でしょうね。

それに格闘家にとって一番嫌なことは、怪我をすることではなく、恥をかくことです。トッププロに負けることは何ら恥ずかしいことではなく(負けて当然なのですから)、むしろ一般人に負けて「金子賢に勝っちゃったお」「金子賢ってテラヨワスwww」とか言われることの方がむしろダメージは大きいでしょう。

私の経験から言うと、格上の相手と試合することほど気楽なものはありません。私はかつてプロボクサーやプロキックボクサー、アマの強豪らと試合をしたことがありますが、負けて当然のつもりで試合に臨んだのでとても伸び伸びと試合ができました。逆に土浦ローカルの大会では、名もない相手には絶対に負けられないという緊張感から心臓バクバクな上に膝がガチガチになりました。ビデオで見返すのも恥ずかしいような固い動きでした(結果は3連続KO勝利だったけど、、ぉ)。

金子にしても、例えばアマチュア修斗なんかに出た場合、私と同様の緊張状態に置かれるのではないでしょうか。芸能人の私が庶民相手に負けるわけにはいかない、となるはずです。と言うか、負けるわけにはいかないから絶対にアマチュアで一からの出発はあり得ないでしょう。

これは、金子にとっては自分が格闘家であることよりも芸能人であることの方が重要だからです。本当に格闘技の世界に挑戦したいのならば、実力が見合う相手と戦って、勝ったり負けたりしながら自分を伸ばすことを選ぶでしょう。

一茂は趣味レベルでの極真参戦だったかもしれませんが、芸能人でありながら自分の身の丈に合った一般人と同じステージで試し合いをしたという点で私は勇気があったと評価しております。